「人間が猫を飼っているわけじゃなくて、猫が人間のそばにいてくれるだけなのよ」
母さんの言葉が蘇ってくる。
母さんの魔法だったのかもしれない。
(猫の)キャベツか思い出させてくれた、母さんの魔法。
「じゃゆっくり目をつぶって」
「ちょっとした魔法みたいなものよ。もしいつの日か、あなたがひとりでどうしようもなく悲しいときは無理やりでも笑って目をつぶればいいのよ。同じように何度でもすればいいのよ」
すると僕の心は温かく、穏やかになっていく。
母さんの魔法はいまだ健在だった。
「ありがとう、母さん」
ずっと言えなかった言葉。ずっと言いたかった言葉。
その言葉をようやく僕は言うことができた。
以上、川村元気著『世界から猫が消えたなら』の一節
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